1-1現在策定中の長期ビジョンについて

  二月に参加させていただきましたアセアン諸国の行政視察において、報告書にもありますが、視察団はマレーシアの経済企画庁のフレティーマネジャーとお会いし、貴重な質疑応答を行う機会を得ました。この中で質問として、マレーシア首相はいち早く、国際金融機関の投資ゲームによってアジア経済は破壊され、大きな被害を受けたと表明されたが、まじめな地域経済計画を行っても国際金融機関の投機的動きによって台なしになっていく、それについてどう対策しますかと質問を投げかけました。そうすると彼は、確かに通貨危機等で経済計画はおくれてしまった、しかし、今までの急成長の陰に何があるのか見きわめることができなかった、また、国際金融機関の質についても深く考えてみる時間がなかった、しかし、このようなことがあることによって大事なことを教えてくれた、外を信用し、外国からの輸入に頼っていた食糧輸入、農業政策なども考え直していきたいと答えてくれました。彼は世界の動きとそれによる地域経済への影響の本質をつかんでいるように思えました。
 今、盛んにグローバリゼーション、経済改革と叫ばれる中、アジアは国際金融の変動を受け、国境を越えた一種の攪乱にさらされているように思えました。視察には行けませんでしたが、インドネシアにおいても、通貨危機から国際通貨基金(IMF)の介入、そして、IMFによる経済改革の要求、巨大グループの解体、景気のさらなる悪化、公共料金の値上げ、暴動、政変、親米の軍勢力の台頭と、まるで一つのプログラムを地で行っているような気がしてなりません。
 経済改革、規制緩和を正論のごとく推し進めることで、見方によっては社会の秩序と、そこに根づいた信用を壊していき、社会の不確実性を増しているように思えます。その先行きの見えない不確実性の中で、投資、消費は不振となり、経済は逆に落ち込んでいき、さらにその状態を経済改革が進んでいないと称して、残されたさまざまな秩序保護制度が分解され、砕かれていきます。やがて社会は個々の小さなばらばらな集まりとなり、個人も企業も銀行も、お互いの不信感の中で貨幣のみにしがみついて放さなくなる、そのような姿となってきているように思えます。
 最後に、その貨幣さえビッグバンと呼ばれる金融大改革と称するものにより、国際的に巨大な銀行に吸収されていく。英国においてほとんどの銀行が米国の巨大銀行に吸収されたようにであります。こうした何か意思ある戦略的とでも言う経済の流れを感じざるを得ません。一つの国をコントロールするには、今は軍事ではなく、規制緩和、国際的標準化を叫び、その国の既存のグループや保護、規制を解体し、通貨を自由に出入りさせ、後は金融を握って貨幣の流れを制御することででき上がるように思えます。アジアの経済の混乱、金融不安の姿を見るにつけ、既に国というものは国際化の流れの中で身動きがとれず巨大な国、また、金融機関の影響を強く受けていると感じざるを得ません。
 そこでお伺いいたします。
 国がますます国際化の影響を受け、不安定になっていくとしたら、地方においては地域経済が破綻することのないよう、地場の産業の確保及び農業生産力の確保を含めたさまざまな対応を準備していくという視点を現在策定中の長期ビジョンに盛り込むことが必要と思われるが、どうか

 長期ビジョンにおきましては、時代潮流の的確な把握に努めたところでございまして、国際化や規制緩和の地域経済への影響についても検討したところでございます。この中で地場産業については、活力のある産業社会を形成していくために、産・学の連携の強化などの条件整備により、既存産業の一層の発展を図ることが必要であると考えております。また、農林水産業につきましては、これまでの生産性の向上を主眼とした基盤整備等により、その振興が図られてまいりましたけれども、今後はこれらに加えまして環境や県土の保全等の機能にも着目していくことが必要であると考えております。