9 児童虐待について

 次に児童虐待についてお聞きいたします。全国の児童相談所で処理された児童虐待の件数が一万件を超え、また、県内児童相談所における児童虐待処理件数も都市化や核家族化の進展に伴う家庭の孤立化、地域における子育て機能の低下、育児不安や育児に対する負担感の増大など、子供を取り巻く環境の変化を背景として、急激に増加し、平成十一年度の集計では二百三十七件と三年前の平成九年度に六十件であったものが、約四倍になっています。
 親の影響を全面的に受け、人格形成の基礎をなす大切な幼児期に親から虐待を受けることは、見えない精神的な傷として子供の人生に大きく影響していきます。さらに虐待を受けて育った親は、また自分の子供も虐待していく、虐待の再生産も統計的には見られ、大変大きな社会的問題であると受けとめていかねばなりません。
 昨年の十一月二十日から「児童虐待の防止等に関する法律」が施行され、この法律の中で、県は児童虐待が児童に及ぼす影響、また通 告の義務について広報・啓発活動をするようになっているがどのように行っているのか。

 県としては、「千葉県児童虐待防止連絡会議」で関係機関において総合的に情報交換を行うと共に発見者の通 告義務の広報・啓発を行っているところである。

 

 

 また、この法律で教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健婦、弁護士及び児童の福祉に職務上関係のあるものは児童虐待の早期発見に努めねばならない、とされている。大阪府では現場で児童虐待の程度を判断でき、対応も定めた「児童虐待の危険度評価基準」を作成し、子供のけがの状態や、虐待の状況、精神の状態、子供を取り巻く環境を二四項目に分けてチェックし、けがだけではなく養育者に問題があれば保護などとし、現場の職員の判断基準としていると報道されていたが、我が県においては法律にある早期発見の取り組みをどのようにしているか、また保健所が乳幼児の定期健診の際心理相談員を立ち会わせ、虐待の兆候を早期発見すると国の方で計画していると報道されたが、この兆候を発見した場合どのような対応がなされるのか。

 本県においては「千葉県児童虐待防止連絡会議」を開催し、情報交換並びに連携強化を図っているところである。また、各児童相談所において「児童健全育成連絡協議会」を設置し、児童虐待の早期発見について対応している。
乳幼児の健康診査に際しては、「母性、乳幼児の健康診査及び保健指導に関する実施要領」に基づき一般 身体所見のほか児童虐待の防止にも留意して行うこととしている。

 

 また、次に児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条一項二号の指導を受けねばならないとされ、さらに保護者が指導を受けないときは、県知事の勧告があるとされているが、この虐待をする親のケアーは、児童虐待が、これほどの広がりを持ってきているなかで特に重要と思われるが、虐待を行った保護者への指導について、どのように行っているのか。

 虐待を行った保護者に対しては、児童福祉司や心理判定員が民政・児童委員や保健婦等の協力を得て継続的にカウンセリング等の指導を行っている。

 

 次に児童相談所長は児童虐待を行った保護者について児童との面 会または通信を制限することができる、さらに措置を解除するときは児童福祉司の意見をきかねばならないとされていますが、アメリカ、カナダなど海外では、児童虐待を理由に子供を家庭から離す場合に家庭裁判所が、決定を行い、裁判所の命令によって親子が分離された場合には、親の監護権が制限されたり、一時的に停止するなどの対応がなされていると聞きます。
 このきわめて社会的な性格故、児童福祉司の専門的判断というより、親の意見にひきづられるということはないかどうか心配されるところであり、措置解除に当たってはどのような対応でもって決定がなされるのか。

 児童相談所は虐待を受けた児童の措置解除にあたっては、子供の意思・態度、保護者の状況等を調査の上、関係機関の援助状況等も勘案し、相談所内の処遇会議で総合的に検討し決定することとしている。

 

 また、各県とも児童養護施設に保護される児童が急増しており、他県では、施設の近隣にアパートや住宅を借り上げ、子供の養育にあたる「地域小規模児童養護施設」を整備しはじめているところもあると報道されていたが、我が県においては児童養護施設への保護入所者はどのような推移であるか、とくに今後、児童虐待防止法の施行で保護入所者の増加が予想されるがどのように対応していくのか?

 入所児童数の推移は、平成12年4月に719名であったものが、本年1月末には26名増の745名になっており、これは県内の児童養護施設の定員790名の約94パーセントにあたる。今後とも既設の施設の定員増や新たな社会福祉法人の設立、さらには里親制度のいっそうの活用をはかり、適切な処遇に努めてまいりたい。