2-1空中消火について

 九月一日、小見川町で行われた七都県市合同防災訓練において、自衛隊のヘリコプターが県の備蓄する水のうを装着し、利根川より水をくみ、空中消火する訓練を見ることができました。私はこれを見てほっと安心いたしました。それと同時に、今でもぬぐい去れない疑問がまたわいてきました。それは阪神大震災では、あれだけ多くのヘリコプターが地上の人の助けを求める声をかき消しながら空中を舞っていたのに、どうして一度もヘリによる空中消火がなされなかったのだろうかという疑問です。
 阪神大震災後、平成八年の九月、東京消防庁が八王子でヘリコプターによる空中消火実験を行いました。それによると、空中消火は火の強いところの完全消火は難しいが、延焼を食いとめること、また初期消火に効果があること等、結論を出しています。
 さらに、ヘリコプターによるある一定の速度と高度においては、火災をあおり立てるという悪影響はなく、また、地上の人命に危険を及ぼすような落下衝撃度は発生しないと結論を出しています。
 考えてみれば当たり前のことですが、阪神大震災の一年前のロサンゼルスの大地震では、ヘリ消火は地震発生二十四時間だけで二十一回、消しとめた火災は十二件と記録が残っています。しかし、阪神大震災では一度もヘリ消火をせず、結果として燃えるに任せてしまったと言えます。その責任を云々するわけではありませんが、自衛隊の須磨海岸から海水をくみ、十五機のヘリで空中消火するという提案を現地が断ったなど、このヘリの空中消火の不使用は極めて悪い前例であったと思います。やはりそのときに適切な対応がとれていればと感じるのは、私一人ではないと思います。
 そこでお伺いいたします。
県は大型消火バケットを整備し、自衛隊にヘリコプターと連携をとり、空中消火に対応していると聞くが、その整備状況、規模、またそのバッケトは市街地火災の初期消火にも十分使えるような仕様となっているかどうかお聞かせください。

 空中消火についてでありますが、県では、昭和四十九年から地上からの消火活動に水利等障害がある林野火災対応としてヘリコプターからの空中消火用水のうを整備し、自衛隊と連携をとり、林野火災に対応しているところであります。本年三月、消火能力の向上を図るため、水のうを従来の容量 二トンから七・六トンのバケットに大型化を図るとともに、配備箇所を六ヵ所から八ヵ所に拡充したところであります。本バケットはカナダ製でありまして、現在、世界各国でも林野火災に対し使用されておりまして、火に直接水を投下できる火災には大きな効果 がありますが、市街地火災に対する実用実験は行われていないと聞いております。

 また、我が県において東京湾岸沿い等の人口密集地帯に関し、自衛隊の大型ヘリコプターによる東京湾の海水をくみ空中消火するという方法は、大地震が起き、交通手段が途絶えた場合の初期消火において極めて重要であり、有効性があると思います。今後、積極的に取り入れていくべきだと考えますが、知事の所見を伺いたい。

 現在、東京消防庁がその有効性や安全性等について検討するため、消防庁等の協力を得ながら市街地火災空中消火に関する調査研究を進めているところであります。昨年度の研究では千二百リットル型タンクを搭載したヘリコプター等を使用して、空中消化実験が行われ、空中消火により一時的に火勢抑止現象が生ずるが、それを持続させるためには連続した空中消火の実施が必要であるとの実験結果 が出ており、今後もさらに空中消火の連続回数と効果の関係等について継続した調査研究を実施していくことになっております。県といたしましては、東京消防庁による調査研究の結果 や、それを踏まえた国の指導方針を見ながら適切に対応してまいりたいと考えております。