6-1文化財について

 文化財についてお聞きいたします。
戦争が終わり五十数年たち、今、戦争の風化が言われ、戦争体験のある方々も年々少なくなってきました。教科書で学び、時折、展示会で見る戦争のパネルや映像も、若い人にとっては知識としてしか入ってこないという感じがいたします。今、日本の歴史の中で最大の変動であった第二次大戦を語る歴史的遺物が全国においてもほとんど消滅しかけています。歴史というものは、戦争に勝利した者、またその勝利者に従っていった者によって常に書き換えられるのはいたし方ないことですが、戦争、戦後を生き抜いた建物や船は黙して語らず、ただ存在して本当の歴史で形をもって伝えようとしている気がしてなりません。
千葉市美浜区高洲の私の事務所のすぐ横に「こじま」という船が団地の公園の中に横たわっています。千葉市が昭和四十年、海上保安庁より払い下げを受けた船であります。この「こじま」は実は別の名前であって、本当の原初の名は海防艦「志賀」で、第二次大戦から今まで生き残った唯一の、そして最後の軍艦です。沖縄特攻に赴く戦艦「大和」の護衛に当たった軍艦「志賀」と言えば、知っている方もおられるかもわかりません。
さらに、戦後米軍に接収され、連絡船として使われ、また日本政府に返還後は中央気象台の定点観測船、また海上保安庁の練習船として平和利用された、いわば戦後の記念碑的存在であります。
千葉市に払い下げになり、海洋公民館として使われてきましたが、老朽化が進み、解体されようとする現状です。しかし、ここ数ヵ月間、地元の商店街、自治会を中心に解体反対の運動が起き、実に七千五百名の解体に反対する署名が九月下旬現在で集まっている状況です。もちろん市の所有であり、市の問題ではありますが、歴史を保存しようとする市民、県民の情熱は県としても大いに注目すべき運動だと思います。
私はこの船を貴重な歴史を語るものとして残してほしいと思います。戦後五十数年、あらゆる面で戦争という時代を切ってきたように思います。時代を切り、歴史を抹消することは、今の時代ばかりでなく、これからの人々の時代への責任も私は含まれていると思います。この「こじま」については一つの例として話しましたが、千葉県には戦争と平和をテーマとした博物館あるいは資料館がないため、次世代の子供たちに伝えていくべき戦時中の歴史資料や生活資料が散逸し、消失しつつあるのが現状ではないかと思われます。
そこでお伺いいたします。県として県内各地に残されている戦争の歴史を初め、近現代の遺産について文化財として指定したり、博物館でこれらの資料の収集及び展示をすべきであると考えるが、教育長の考えをお伺いしたい。

 県内各地には原始、古代から近現代までの貴重な資料が数多く残されておりまして、県の歴史を知る上でかけがえのないものとなっております。これら資料の中で保存状況が良好で、文化的、歴史的に重要なものにつきましては、所有者等の同意を得まして、文化財保護審議会に諮問し、県の文化財として指定いたしております。